下書き⑥

生き物や花を育てるときのことを思う。

植物が元気に育つためには、日光、水分、良質な土、それから肥料など様々な要素を必要とする。

人間がそれらを惜しみなく与えることを厚かましくも「育てる」と表現するわけだが、例えば大きく育って欲しいからといって植物に水分を過剰に与えれば根腐れを起こし、枯れてしまう。「釣った魚に餌をやらない」とはよく言ったもので、もちろん餌をやらなければ魚は死んでしまうが、餌の与え過ぎはそれと同じか、あるいはそれ以上に悪手なのである。

そのため、与えることについての量的なみきわめこそが枢要なのである。このことは単に飼われる生き物の肉体的健康のためだけでなく、育成主の精神的健康に対しても意味を持つ。

というのは子を持った親の視点で考えてみればわかることだ。親というのは子供が可愛くて仕方がないので細々と世話を焼いてやるわけだが、何しろ子供というのは我儘なもので、いくら親が存分に尽くそうとも不満を口にするものなのである。それとこれとは別、というわけだ。ほとほと困り果てて、親は頭を抱えてうなされてしまう。


まず与え、しかるのち、受け取れ。